まずは油回転式の真空ポンプの仕組みを知る!
「真空」とは、宇宙のように気体が存在しない場所を除き、密閉空間から気体を強制的に外に出すことで得られます。真空は、食品の酸化を防ぐ真空パックや、吸引、吸着、乾燥などあらゆる場面で活用されています。
真空ポンプの仕組みを端的に表現すると、真空にしたい容器内の気体を吸入し、圧縮して高圧側に排出する、吸入、圧縮、排気を繰り返す機械と言えます。真空ポンプの代表例としては、「油回転ポンプ」と「油拡散ポンプ」の2種類が挙げられ、使われる真空ポンプ油も種類によって異なります。「油回転ポンプ」では、大気圧で作動し、図1のようにローターの回転によって気体の吸入、圧縮、排出を繰り返します。一方、「油拡散ポンプ」では、ヒーターで200℃以上に加熱し、高速でノズルから噴き出す油の蒸気の流れに乗せて気体を排出します。今回は、油回転式の真空ポンプに焦点を当ててみましょう。
図1.油回転式真空ポンプの概略図
真空ポンプで起きる不具合とは
真空ポンプで最も大事なことは、「より早く必要な真空を作り出すこと」です。油回転式ポンプでは大気圧から中真空(105~10-1Pa)までの真空を作れるポンプと言われています。真空にどれだけ近づけるかの性能指標は到達真空度(単位:Pa=パスカル)で表現され、この数値が低い方がより到達真空度が高いと言えます。
「なかなか真空度が上がらない」というトラブルを耳にすることがありますが、これは「ポンプが真空を作ろうとしているのに、ポンプ内の気体が思うように排出されていない」と置き換えることができ、実は使用するオイルの性能によっても異なることをご存知でしょうか?
真空ポンプのオイルの役割
油回転式ポンプで使用されるオイルの役割は、ポンプ内でケースとローターの間を潤滑すること、また、ケースとローター間を含む全ての摺動部の隙間を埋めることで、気密を保ち、高圧部から低圧部に気体が逆流しないように「部品間をシール」することです。
真空度を得るためにオイルに求められる性能
1. スラッジの発生が少ない
真空度が上がらない原因の一つとして、オイルの劣化によって生じるスラッジの影響が考えられます。スラッジとはオイルから生じる黒色系の劣化生成物ですが、このスラッジの存在によりケースとローターの間に隙間ができ、効率が悪化するためです。また、スラッジが金属間に介在すると摩擦が大きくなり温度が上昇し、さらにオイルの劣化が促進、スラッジの発生を促す、と悪循環に陥ります。
図2.オイルの種類によるスラッジ生成量の違い
上記図2はオイルを強制的に劣化させた後のスラッジ量を示したグラフと、劣化後のオイルの写真ですが、種類によって劣化度合いが異なり、スラッジの発生量にも大きな差があることが分かります。
なお、スラッジ発生を抑制することで真空度を上げるだけでなく、オイル交換頻度を少なくすることも期待できます。関連する潤滑解決事例「真空ポンプオイルの交換期間を3倍に伸ばして年間140万円のコスト削減」をご覧ください。
2. 蒸発しにくい
真空ポンプは真空を作り出すために気体を圧縮・排出していますので、ポンプ内で縦横無尽に動いているオイルにも、真空を妨げないように、「できるだけ気体にならない」ことが求められます。オイルは比較的蒸発しにくい性質を持ちますが、蒸発量を完全に0にすることはできません。ただ、この蒸発量はオイルの種類によって大きく異なります。
図3. 蒸発量の比較試験結果(NOACK試験)
図3は蒸発量を測定するNOACK試験の概要と、結果のグラフです。減圧状態で熱をかけてオイルを実際に蒸発させるシンプルな試験ですが、試験結果からもオイルによって蒸発量が異なることが分かります。
3. 水との分離性に優れる
また、空気中には水分が含まれていますので、真空ポンプ内にも徐々に水分がたまります。用途によっては直接水が混入するケースもあり、オイルには「水と素早く分離する」ことが求められます。分離した水分はドレンから抜き取ることができますが、分離できずオイルの中に分散されたままで存在すると、この水分が蒸発し真空度を下げる要因に繋がります。
図4. 強制劣化後の水分離性試験結果
図4は熱劣化後の分離性を比較した写真ですが、1時間経過しても分離できないオイルも存在します。新品の時は問題が出なくても時間が経過するにつれ分離性が悪くなり、徐々に真空度に影響を及ぼす場合があります。
まとめ
真空度が上がらない場合の、オイルの選定ポイントはこちら
・スラッジの発生が少ないオイルである
・蒸発しにくいオイルである
・水との分離性に優れるオイルである
上記3つを満たす、シェルルブリカンツジャパンの真空ポンプオイルはこちら↓
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