省エネ性作動油の選択に悩んだ際に注意すべき、「省エネ効果の持続性」について技術的にご説明いたします。
省エネタイプの作動油とは
省エネタイプの作動油の原理は《省エネタイプの油圧作動油 – 原理とは?》でご説明しましたが、同じような性能をうたった商品が世の中には多く存在します。どのオイルを選ぶべきか悩まれている方もいらっしゃると思いますが、「投資した額に対して、どれくらいのリターンを得られるか」を、短期的ではなく、中長期的に評価することが重要だと考えます。
省エネ効果は本当に持続する?
例えば、省エネ作動油を「年間3%の省エネ」を期待して導入するとします。その際、どれくらいの期間で初期投資をペイできるかを計算して導入に踏み切ることになりますが、例えば「計算上では電気代削減により初期投資を2年間でペイ、それから先は得をする、さらにはオイル交換期間を延ばすことで4年間使用可能になり大きなコスト削減となる」と試算したとしましょう。このように試算されるケースは多いと思います。ただ、ここに不確実な要素があることにお気付きでしょうか?
オイル交換期間の延長に関しては、過去から多くの実例があり、分析を組み合わせることで高い確率で実現できることが分かっています。ただ、省エネに関しては導入直後の効果を測定することはあっても、数年後に本当に効果が持続しているかを検証した事例は極めて少ないことをご存知でしょうか?それでは「本当は効果がないの?」、「リスクを伴う投資?」と、心配の声が聞こえてきそうですが、実際はそうではありません。しっかりと効果が持続する技術理論を備えた作動油を選択することで長期間の効果を得られる可能性が高くなります。
省エネ効果が持続する作動油と、そうではない作動油の違い
省エネが持続する作動油とそうではない作動油を見極めるためには、まず省エネの理論を正しく認識することが重要です。《省エネタイプの油圧作動油 – 原理とは?》でご説明した下記の図をご覧ください。
図1. エネルギー損失が起きている場所と省エネ効果を生む4つの要素
作動油の経路では、40~60%のエネルギー損失が発生しており、その損失を減らすことで省エネを実現しています。その効果を生む要素は主に4つありまずが、その要素が経路のどこに作用するかを表したのが上記の図1です。こちらを見ると、損失の大きい油圧配管とフィルターへの作用が重要であることが分かりますが、世の中の多くの省エネ作動油がうたっている「摩擦を下げる」という要素は実はここに作用しないことが分かります。ではなぜ「摩擦を下げる」という要素をアピールする商品が多いのでしょうか。それは、比較的容易に実現できるからです。摩擦を減らす技術は潤滑油の世界では大部分が確立されており、添加剤を投入することで摩擦を下げることができます。
「粘度指数を上げる」という要素も比較的簡単で、こちらも粘度指数向上剤と言われる添加剤を加えることで実現できます。ただ、この粘度指数向上剤の多い少ないはベースオイルそのものの性能が大きく影響します。端的に言うと、「安価なベースオイルに多くの粘度指数向上剤を入れる」、もしくは「粘度指数が高い高性能なベースオイルを使用する」、のどちらかを選択します。当然、作動油の90%以上はベースオイルで構成されていますので、前者の方が安く設計することができます。
一方、「密度を下げる」という要素は、ベースオイルそのものの性質であり、その性質を持ったベースオイルを選択し安定的に調達することが必要ですが、そのようなベースオイルは多くは存在せずコストも高くなる傾向があることから、この選択に踏み切らないメーカーが多いのが現状です。
そして、これらの要素を精査する際の重要なポイントとして、「添加剤は劣化によって消耗」されていくということです。そのため、劣化を起こしやすい処方では、省エネ効果が徐々に減少する可能性があります。一方、ベースオイルそのものの性能は変化が小さく特に密度に関しては時間が経過しても変化はほとんどありません。
これらを言い換えると、「摩擦を下げる」、「粘度指数を上げる」という2つの要素のみ触れている省エネ作動油には注意が必要と考えることができます。まとめると下記のように区別することができます。
もし、どの省エネ作動油を選択するかに悩んだ際は、省エネの理論と長期的に使用した時の効果について質問することをお勧めします。また、数年間使用した後の検証結果があるかどうかもチェックすべきポイントです。
まとめ
● 省エネ作動油の持続性は作動油の配合処方によって異なる
● 添加剤の効果は劣化が進むことで徐々に減少する可能性がある
● 選択に迷った際は長期間使用した時の効果と、実際の効果検証の有無を
確認することが大事
新しい機械の導入よりも安価に実践できる作動油による省エネ。短期間にオイルを交換する方は、一般的な省エネ作動油を頻繁に交換することも選択肢の一つかもしれません。理論を理解し、数多くある商品の中から、ご自身の機械・生産活動に最も適した商品を選択することが重要です。
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