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潤滑技術 - 航空オイル編

タービンエンジンオイルの選定で何が変わる?

今回は、タービンエンジンを搭載した航空機の整備に関わるエンジンオイルの選定についてお伝えします。
Shell Aviation Picture

タービンエンジンの変化

タービンエンジンは航空機の航続距離延長、燃費向上のため日々改良がおこなわれています。エンジンの温度は1960年ごろから急激に上昇し始め、ボーイング787にも搭載されているエンジン型式GEnxはタービン入り口温度1,500度を超えると言われています。
また、ファンの大型化が進み、シャフトにかかる負荷も大きくなる中、オイルタンクは小さくなり、エンジン内部を少量のオイルで潤滑しなければならなくなっています。

タービン入り口温度の推移概要
図1.タービン入り口温度の推移概要

エンジン設計が大きく変化する中で、数十年もオイル選定を変えていないとしたら、そのオイルは現代の厳しい要求に対応できるのでしょうか?

安価なオイルにこだわることのリスク

古くから使用されているオイルは比較的、安価に入手することができます。しかし、現代のエンジン向けに開発されたオイルはオイル消費量を少なく抑えることで単価の差以上にコストを削減する可能性があります。
下記では、1機当たり年間3,000飛行時間、20機保有の航空会社でのオイル消費量の差を試算しています。

航空会社が違うオイルを使用する場合のコスト比較図

競争の激しい航空業界においてコスト削減は必須です。多くの航空会社がオイルの値下げ交渉を行っていますが、単価削減の成果は整備コスト全体を見たとき、あまり大きくありません。安価なオイルにこだわり過ぎると、大きなコスト削減の機会を逃すことになります。

オイル選定で変わること

現代のエンジンに適したエンジンオイルを選定することで2つのメリットを得ることができます。

1. オイル消費量の削減

オイル消費量の増加の主な要因は、ゴム・シールの劣化や膨張です。高温のエンジン内部でオイルとゴム・シールが触れることで劣化し、その役目を果たすことができなくなると消費量が増加します。ゴム・シールを劣化させにくい相性の良いオイルを使用することで、オイルの消費量を減らすことができます。
実際にゴム・シールとの相性が良く消費量の少ないオイルを採用した航空会社では、従来のオイルに比べ1つのエンジンで年間35Lのオイルの節約ができました。(エンジン型式CFM56-7)

2. メンテナンスコストの削減

最新のタービンエンジンの高温・高圧に対応できないオイルを使用すると、コークスを生成されることがあります。これらのコークスにより給油パイプが詰まりオイルの供給が滞る可能性があります。エンジンのオーバーホール時にコークスの除去や摩耗したパーツの交換を行う場合には多額のコストがかかり、航空機の稼働率の低下にもつながります。
下図は一般的な汎用オイルとコークス生成の少ないHTSオイル(※)を使用したエンジンのベアリングの写真です。

エンジンベアリングの状態比較

図2.エンジンベアリングの状態比較

HTSオイルを使用したエンジンの写真のようにベアリングの汚れが少なければ、オーバーホールにかかる時間やコストを削減することができます。

(※)参考:HTS(High Thermal Stability)オイルとは
タービンエンジンオイルの米軍規格MIL-PRF-23699Gには通常の「STD」と高温に対応した「HTS」の2つのグレードがあります。HTSオイルはSTDオイルに比べて熱劣化させた後のコークス生成量が少なく粘度変化も少なく抑えることができます。一方で、その性能を得るために多くの添加剤が使用されており、ゴム・シールに悪影響を及ぼす可能性があります。
日本国内で多く稼働しているエンジンCFM56のサービスマニュアルでは、使用できるHTSオイルはAeroShell Turbine Oil 560(以降、ASTO560 )のみとなっています。ASTO560は他社のHTSオイルとは異なり、シール適合性と高い性能を両立しています。

ASTO560

ASTO560についてより詳しく知りたい方は「こちらの動画」をご覧ください

まとめ

タービンエンジンの変化に合わせてオイルの性能も向上しています。適切な選定によって、お客様の所有機体の安定稼働や整備コストの削減に貢献できる可能性があります。一度オイルの見直しを検討してみてはいかがでしょうか?
当社では、オイルの消費量が少なく、エンジンの保護性能に優れたAeroShell Turbine Oil 560をラインナップとして取り揃えております。ご興味がございましたら是非ご検討ください。

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