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潤滑油グリースコンテンツ

潤滑技術 - グリース編

グリースの組成、構造、ちょう度、性能について

グリースとは

グリースとは、「液体潤滑剤(基油)と増ちょう剤からなる、半固体状または固体状の潤滑剤」と定義がされており、外力を与えない状態では、潤滑油のように流動することはなく静止していますが、撹拌したりして外力を与えると流動する性質を持っています。グリースの成分は、基本的には、基油(原料油)と増ちょう剤、添加剤の3つからなります。
グリースの構造を表す図です。

増ちょう剤は微細な固体で、リチウム石けん、カルシウム石けん等の金属石けんと、ウレア等の非石けんがあります。下記図は、グリース中に分散しているリチウム石けんの増ちょう剤の様子を示した電子顕微鏡写真です。

グリース中に分散しているリチウム石鹸の増ちょう剤の様子の写真です。
増ちょう剤が繊維状に絡んでいる様子が見られます。この繊維が油を抱き込み、グリースの構造を維持しています。潤滑箇所が、静止しているときは半固体状のままですが、潤滑箇所が動き始めると共に流動し、更にせん断速度が大きくなると基油に近い状態まで流動化します。そして、また静止すると、半固体状に戻ります。このような特性はグリース中の増ちょう剤の網目構造によります。下記図のように、静止しているときは、網目構造が3次元的に複雑に絡み合っています。しかしせん断を受けると、網目構造はせん断方向に並び、せん断が止まると再び元に戻ります。(グリースの種類によっては、増ちょう剤が繊維状になっていないものもあります。)

静止とせん断を受ける時の網目構造のイメージです。

以上のように、増ちょう剤の網目構造は非常に重要で、この網目構造が壊れてしまうとグリースが軟化したり、グリースが本来有する性能を損ないます。網目構造が壊れてしまう原因としては、機械的な強いせん断や、高温条件での使用があります。機械的なせん断に対するグリース構造の強さを、機械的安定性といいます。また、水分が混入によって液状化し、漏えいする場合もあります。
必要な潤滑箇所に潤滑油を使用するのか、グリースを使用するのかは、使用環境を考慮して最適な潤滑製品を適材適所で選定する必要があります。下記が潤滑油とグリースの特長を潤滑方式と潤滑性への影響度を比較したものになります。潤滑方式の観点で言えば、グリースは機械構造が簡略化でき、比較的漏れも少なくクリーンな環境を実現でき、補給間隔も潤滑油に比べ少ないと言われています。一方で、細部の潤滑が困難であったり、異物の除去が難しい、冷却能力が小さいといったデメリットもあります。

グリースと潤滑油の比較表です。
そのため、使用される機械や環境を踏まえて、潤滑油もしくはグリースを選定する必要があります。

 

ちょう度

ちょう度は、グリースの硬さを表すもので、物理的な値を示す重要なものです。ちょう度の分類は、NLGI(米国潤滑グリース協会)によって定められた、NLGIちょう度分類が代表的で、現在は、国際的に標準化されています。下記表に示すとおり混和ちょう度の値により区分され、各ちょう度グレードに分類されます。
ちょう度の説明図です。
このちょう度の硬さのイメージを持っていただくために、身近なものの硬さをグリースちょう度計に用いて測定してみました。

グリースの硬さを説明する図です。

グリースの性能

グリース全体に共通して求められる性能は以下の通りです。

適性ちょう度

潤滑油の粘度同様、グリースのちょう度は潤滑性において非常に重要となります。グリースが軟らかすぎると、漏れや、油膜切れをおこしたり、グリース潤滑部分以外にグリースが入り込むことで、騒音の発生や撹拌抵抗の増加、発熱がおきたりする可能性があります。逆に、硬すぎると、抵抗が大きくなりすぎたり、油分の供給が不足したりし、潤滑不良を起こす場合があります。ちょう度は、増ちょう剤の種類や量、基油の組成や粘度に関係しています。

酸化安定性

グリースは高温時等に空気中の酸素と反応して酸化劣化することにより、異臭の発生や、グリースの変色、ちょう度の変化および滴点の変化などを起こすことがあります。酸化安定性を良くする目的で、酸化防止剤が添加されますが、基油や増ちょう剤の種類も酸化安定性には関係してきます。

機械的安定性

グリースは潤滑部において機械的せん断を受けることで、軟らかくなります。増ちょう剤のグリース構造が、せん断によって破壊されるからです。そのため、機械的安定性は増ちょう剤の種類に依存します。機械的せん断によってちょう度が変化し、グリースの漏れ、潤滑不良、騒音などの現象が起きる可能性があります。

防錆性、腐食防止性

潤滑油同様、金属への防錆性、腐食防止性がグリースには求められます。水を使用する箇所では、錆が問題になります。また、銅または銅合金が軸受の保持器や集中給脂配管に用いられる場合、グリースの銅に対する腐食性が問題となることがあり、従って最適な添加剤によって強化されたグリースが求められます。

さらに使用される環境・用途によっては以下のような性質も要求される場合があります。

低温特性

寒冷地等でグリースが用いられる場合グリースが硬くなり、起動時のトルクの増大や、運転時のトルクが問題となることがあります。特に、精密機器、自動車部品、航空機部品等では低温特性の一つとして低トルク性が要求されます。

耐熱性

グリースは、熱によっても増ちょう剤のグリース構造が破壊されたり、酸化劣化を生じたりして、グリース構造が維持できなくなり、軟化や軟化による潤滑不良、騒音等の原因となります。グリースの耐熱性は、増ちょう剤の熱安定性に大きく依存するため、増ちょう剤の種類によって、耐熱温度が異なります。製鉄機械、製紙機械や、自動車部品の中でも高温で使用される部品等には、高い耐熱性が求められます。グリースの耐熱性の指標の一つとして滴点があります。

耐水性

グリースが水によって流されにくい性質や、吸水しにくい性質、または、吸水や混合したときに性状変化が起きにくい性質を、耐水性と呼びます。上記のように、水に対する性質は複数あるので、グリースが使用される環境において、問題ないかどうかを考える必要があります。具体的な試験方法としては、水洗耐水度試験や、水を混ぜたシェルロール試験等が挙げられます。製鉄機械、製紙機械では水を多く使い、また、建設機械等では屋外で風雨にさらされるので、耐水性が求められます。

極圧性・耐摩耗性

高荷重や衝撃荷重がかかる部位に使用されるグリースには、耐荷重能や耐摩耗性が必要です。グリース成分中の、基油粘度や、極圧添加剤の有無が関係します。

圧送性

製鉄設備をはじめ建設機械、大型トラック、搬送機等の多くの機械で、グリースをポンプで送る集中給脂装置を採用しています。ポンプでグリースを送る場合の良否は、圧力を加えてグリースを流動させた場合の管内抵抗を、見かけ粘度によって評価します。この数値が小さいものほど、圧送性がよいとされます。

グリース漏れ

軸受等から、グリースが流出すると軸受の潤滑寿命を著しく低下させ、かつ機械の故障の原因にもなります。グリースの漏れには機械的安定性や耐熱性が関係します。

軸受音響特性

転がり軸受から発生する音と振動の性質をいいます。軸受の騒音の原因としては、ちょう度が適性でない、グリース中にゴミや添加剤等の粒子がありグリースが均質でない等があげられます。軸受音響特性は、軸受の精度や、機械の振動等の影響もうけますので、非常に複雑です。

グリースは各産業界であらゆる設備に使用されています。そのため設備の稼働状況、使用環境に応じて、求められる性能は千差万別であり、上記のようにどのような性能が求められているかを適切に把握し、グリースを選択する必要があります。

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