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潤滑技術 - 航空オイル編

ピストンエンジンオイルのマルチグレードとは?

 

レシプロ航空機用のマルチグレードオイルについて詳しくご紹介します。実は同じ“SAE J1899 Grade Multigrade”であっても商品によって性能が異なります。

 

マルチグレードとは

オイルは、エンジンの性能を高める数多くの機能を発揮します。そのなかでも最も重要なのが、オイル層により可動部品間の摩擦を抑える機能です。オイルは2つの部品表面を分離するだけではなく、表面間にかかる荷重を支える能力も備えていなければなりません。オイルがこの荷重を支えることができなければ、2つの面がオイル膜を突き破り、最終的には接触することになります。その場合、修復不可能な重大な損傷を生じるおそれがあります。

 

オイルの耐荷重の大きさを示す重要な指標が、オイルの粘度です。

粘度とは、特定の流体の流れに対する抵抗を指します。条件が同じであれば、粘度の低い液体(水など)は、粘度の高い液体(シロップなど)よりも速く流れます。一方、一般には粘度の高いオイルのほうが、粘度の低いオイルよりも大きな荷重を支えることができます。

したがって、必要な大きさの荷重を十分に支えることができると同時に、流体をポンプで効率的に供給できるだけの粘度をバランス良く備えたオイルを選ぶ必要があります。

ただし、オイルは加熱されると粘度が減少し、また冷却されると粘度が増加します。この温度と粘度の関係を示すのが、粘度指数です。

 

 

ミネラルマルチグレード

ミネラルマルチグレードでは、低粘度鉱物オイルを使用し、さらに粘度指数向上剤と呼ばれる添加剤を添加しています。粘度指数向上剤について詳しくはこちらをご確認ください。

この添加剤によって粘度指数を上げることができますが、せん断速度が大きくなると粘度が下がる恐れがあります。この現象は、オイルポンプ内部などで生じます。オイルの粘度が減少するため、荷重支持能力が低下します。市販されている20W-50航空機用マルチグレードの大多数は、ミネラルマルチグレードです。

 

半合成マルチグレード

30年以上前、シェルが初めてマルチグレード航空機用ピストンエンジンオイルの評価を開始した際、鉱物ベースオイルのみを配合したマルチグレードオイルでは、エンジンの高荷重個所を全て適度に潤滑させる十分な粘度をベースオイルに与えることができないことが試験から明らかになりました。そこで、全合成ベースオイルを原料とした配合を試験し、飛行評価を実施しました。この配合は、優れた耐摩耗特性を発揮した一方、飛行評価では、長時間の運行によって燃焼の副生成物である鉛を主な成分とした粘り気の強い物質が発生しました。合成オイルは優れた潤滑剤であり、高温でも安定性が高く、低温でも非常に優れた流動特性を有していますが、燃焼の副生成物である鉛を溶解させる性能はやや劣っています。

半合成オイルでは、鉱物オイルと合成オイルの混合物を使用しています。半合成オイルの利点としては、合成オイルの熱安定性が鉱物オイルよりも優れており、劣化しにくいことがあげられます。そのため、オイルの性能を長く維持するとともに、酸性化合物の生成量を抑えることにより、エンジン内部に酸腐食が生じるリスクを抑えることもできます。

エーロシェル オイルW 15W-50は、1980年代の発売以降、現在に至るまで、承認されているほぼ唯一の航空機用半合成マルチグレード製品です。

エーロシェル オイルW 15W-50の優れた性能を3つご紹介します。

 

他社製品を上回るオイルの寿命

酸化はオイルの性能を劣化させる主な原因です。190°C/374°Fにおける酸化試験では、以下の結果が得られています。

1. ASTM D6186に基づく値。

注:加速劣化(酸化)試験からは、オイルの寿命に関する適切な指標が得られますが、オイルドレン間隔(ODI)に直接あてはめることはできません。ODIについては、ご利用の航空機/エンジンメーカーからの推奨に従ってください。

 

優れたデポジット防止性能

酸化や熱劣化によりスラッジやデポジットが生成され、オイル性能が低下するおそれがあります。シリンダーヘッドの最高温度における試験では、以下の結果が得られています。

2. 260℃/500℉において劣化させたオイルについて、業界標準のSequence GASTM D7320)試験に相当する社内試験を実施した後、フーリエ変換赤外分光(ASTM D7214)測定を実施。オイルごとに試験を2回実施し、その平均値をグラフに表示。

 

腐食の抑制

エンジンは、常に腐食の危険にさらされています。腐食が生じた場合、高額の保守費と運用費が発生するおそれがあります。

業界標準試験では、以下の結果が得られています。3

3. ASTM D665Bに基づいて試験を実施した他社のマルチグレードオイルとの比較。

 

まとめ

ピストンエンジンオイルのマルチグレードオイルにはミネラルマルチグレードと半合成マルチグレードがあります。半合成マルチグレードのオイルは長寿命,デポジット防止、腐食抑制に優れています。

エーロシェルオイルW15W-50はほぼ唯一の航空機用半合成マルチグレード製品で、航空機エンジンを適切に保護します。

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