シェル ルブリカンツ ジャパン株式会社

潤滑油グリースコンテンツ

潤滑技術 - 陸運オイル編

冷凍車におけるエンジンオイルの管理方法

近年、フードロス削減に対する関心の高まりやワクチンにおける極低温輸送の必要性によって、急速な市場規模拡大を続ける「コールドチェーン」。
今回は、そんなコールドチェーンの主役である、冷凍車における適切なエンジンオイルの選定と管理方法についてご紹介いたします。

冷凍車のメンテナンスの重要性

食品を筆頭に多業種で温度管理徹底が厳しく問われる現在において、輸送物の品質問題にも関わる冷凍車のメンテナンスは、非常に重要です。
冷凍車特有のメンテナンスには、第一に冷凍機・ユニットが挙げられますが、「エンジン」に関しても、普通車両以上にエンジンオイルの選定や管理方法に注意が必要です。

それでは早速、冷凍車のエンジンの特徴と、オイルの選定や管理方法に関して気を付けるべきポイントを整理していきたいと思います。

冷凍車の構造

ここでは冷凍車の9割以上を占める「機械式」冷凍車の構造を取り上げたいと思います。
下図の通り、トラックの荷台上部に冷凍機が設置されており、これが気化した冷媒を庫内に送ることで冷却を行っています。大枠はエアコンと同じ仕組みです。

行列のできるトラック相談所『冷凍車・冷蔵車の構造とは』
(http://torack7.blog.fc2.com/blog-entry-171.html)参照

冷凍機の動力源による種類

この冷凍機を稼働させる動力源は2種類あります。
下表にてそれぞれの定義と特徴をご説明いたします。

 

適切なエンジンオイル管理とは

各方式の適切なオイル管理方法について詳しく見ていきましょう。

1)サブエンジン式の場合
輸送中においては車両停止時も常に稼働しているサブエンジンは、車両の走行距離ではなく、サブエンジンの「稼働時間」でオイル交換期間を管理する必要があります。
交換時間はサブエンジンメーカーが決めており、一例として国内大手のサブエンジンンジンメーカーではDH-2オイル使用で250時間(使用条件によって変動)などの基準を設けています。

2)メインエンジン式(直結式)の場合
走行にプラスして、冷凍機の動力源としての出力が必要となるため、エンジンやエンジンオイルにかかる負荷が大きく、普通車両と比較して同じ走行距離であってもオイルの劣化が早い傾向にあります。
そのため普通車両とは異なる基準でオイルを選定・管理する必要があります。

冷凍車に適切なエンジンオイルの選定・管理方法とは

冷凍車におけるオイル選定・管理にあたっては以下の方法が有効です。

1)冷凍車特有の条件を鑑みたオイル交換期間を設定する
ここまでご説明のとおり、冷凍車では普通車両よりもエンジン負荷が高く、エンジンの損傷やエンジンオイルの劣化のリスクが高まります。
そのため、エンジンオイルの交換期間は、根拠なしに普通車両と同じ設定にするのではなく、過酷な条件であることを前提に設定することをお勧めします。
例えば、一定期間ごと(例:1か月、5,000km)にオイル分析を行い、経時劣化の傾向をこまめに確認することで、適切なオイル交換期間の設定が可能です。

2)長寿命タイプのエンジンオイルを選定する
メインエンジン式においては前段でご説明した通り、走行時間以上の長時間にわたりエンジンおよびエンジンオイルが高温に晒されることになります。
そのため、エンジンをしっかり保護し、またエンジンオイル交換の工数を削減(車両の実働時間を延ばす)ために、高温に晒されてもオイル劣化を起こしにくい長寿命タイプのエンジンオイルの選定をお勧めします。

※冷凍車を含め、エンジン及びエンジンオイルへの負荷が高い条件を「シビアコンディション」と総称します。このシビアコンディションの特徴や、適切なエンジンオイルの選定と管理については、別記事で詳しくご説明いたします。

まとめ

●冷凍機の動力源はサブエンジン式とメインエンジン式(直結式)の2種類
●サブエンジン式は稼働時間でのオイル交換期間の設定が必要
●メインエンジン式は普通車両よりも過酷な状況を想定したオイル選定・管理が必要

今回ご紹介のとおり、冷凍車の安全・安定運行のためには、普通車両以上にエンジンオイルの選定や管理方法に留意する必要があります。
輸送品質を守り、定時運行を実現するためにも、適切なオイルの選定と管理を心がけていきましょう。

コールドチェーン事業に関わるあなたに、ぜひ下記の記事をお読みください。
『低温環境下で使える、潤滑油グリースについて』